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2025.06.03

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防錆シート(フィルム・紙)徹底解説|使い方・効果・デメリット

金属製品の保管や輸送時に避けて通れないのは「錆」の問題で、防錆処理をおこない対策を講じる必要があります。なかでも手軽なのは、梱包時に使用するだけで防錆効果を発揮する「防錆シート」です。防錆シートには紙・フィルムタイプといった違いがあるほか、価格や性能はメーカーごとにさまざまです。そのため、自社の目的や使用環境に合ったものを選ぶ際に悩む場合も多くあります。

そこで今回は、防錆シートの概要や使い方、メリットやデメリットを一挙解説します。防錆シート選びにぜひお役立てください。

防錆シートとは

防錆シートとは、その名の通り錆を防ぐシート状の梱包資材です。シートには気化性防錆剤が塗布、もしくは含まれており、錆びやすい金属製品を守る梱包材として役立ちます。

そもそも、金属はなぜ錆びるのでしょうか。金属を鉱石から取り出すと、空気中の酸素や風雨にさらされ、空気中の酸素や水分と結合する「酸化」が起こります。結果、錆の発生や劣化につながります。

防錆シートは金属が水や酸素、ほこりなどの汚れと触れ合うのを防ぎ、硫化水素・二酸化硫黄・塩素・アンモニアといった腐食性ガスからも守ります。あらゆる錆の元から金属を守る製品として重宝されているのが防錆シートです。

防錆シートは2種類ある

防錆シートは、おもにクラフト紙でできた「防錆紙」と、プラスチック製のフィルムでできた「防錆フィルム」の2種類に分けられます。防錆紙は防錆フィルムに比べて多くの気化性防錆剤を含んでおり、防錆力の高さや持続性が特徴です。

一方、防錆フィルムはフィルムの成膜に影響するため気化性防錆剤の含有量は少なめですが、透明性が高く包んだ状態でも製品を確認できます。なお防錆紙・防錆フィルムのどちらも、金属の種類やサイズによって効果を発揮する防錆剤の成分が異なるため、事前に確認が必要です。

防錆シートの仕組み

防錆シートには「ジイソプロピルアミンナイトライト」や「ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト」をはじめとする気化性防錆剤が含まれています。液体だった防錆剤が時間経過によって気体に変化し、金属の表面に薄い皮膜を形成するため、梱包している金属製品を錆から守れます。

防錆剤の種類と違いは?

防錆剤は、気化性の防錆シート以外にも、水溶性や油溶性のスプレー・オイルなどがあります。水溶性防錆剤はスプレーで散布したり、金属製品を浸漬したりして使用します。幅広い金属製品に対応しており、使用後の拭き取りは基本的に必要ありません。また火災の心配がなく、安全に使えるのもメリットです。ただし、金属表面に油が付着していると防滑剤を弾いてしまう点や、効果が持続しにくい点がデメリットです。

一方、油溶性防錆剤は金属加工油や潤滑油に添加して使用するのが一般的です。長期的な防錆効果が期待できるうえ、錆の原因である水分を弾く効果があります。ただし、塗布・脱脂の手間や時間、廃棄物処理のコストが多くかかるうえ、塗りムラがあると一部が錆びてしまいます。油による火災リスクも考慮し、慎重に使用しましょう。

なお、水溶性防錆剤による皮膜の形成構造は以下の3パターンに分かれます。

・酸化皮膜型
金属表面の酸化によって3nm〜20nmの薄い膜が自然発生し、金属を錆から守ります。金属との密着性が良く、高い防錆効果を発揮します。

・沈殿皮膜型
金属表面で防錆剤と結びついた水分が皮膜を形成します。沈殿被膜型は、カルシウムイオンなどと防錆剤が結合して厚い皮膜をつくる水中イオン型と、金属面のイオンと防錆剤が結合して薄い皮膜をつくる金属イオン型の2つがあります。

・吸着皮膜型
金属表面に吸着する分子と、油に馴染みやすく酸素を遮断する分子の2つを形成し、強力な皮膜で錆の発生を防ぎます。酸液や水溶液中でも高い効果を発揮しますが、清浄でない金属表面だと不純物が混ざってしまい、吸着性が悪くなります。

油溶性防錆剤は吸着皮膜型に該当します。

防錆シートの使い方

防錆紙シートの形状は、シートタイプ・ロールタイプの2種類で、必要な分のシートを取り出して使用します。まずは梱包準備として、金属製品を洗浄しましょう。ほこりや指紋、汚れなどの不純物が付着していると、防錆剤が金属表面に届かなくなってしまいます。場合によっては腐食が進む可能性もあるため、まずはきれいに金属製品を洗浄するのが大切です。

その後、防錆剤が付着している面を内側にして、金属製品と触れ合わせるように梱包します。防錆シートと金属製品の距離が遠すぎると防錆効果は低くなってしまうため、30cm以内におさめるのがポイントです。

梱包後は、防錆シートの端をテープなどでしっかりと留めれば完了です。防錆シートを取り外した後に洗浄・乾燥をしなくてもそのまま金属製品を使用できます。防錆シートは再利用せず、各自治体のルールに従って廃棄しましょう。

防錆シートの効果

防錆紙と防錆フィルムは、それぞれJIS規格(日本産業規格)で「JIS Z 1535」と「JIS Z 1542」として認められている製品です。

各規格での試験では、以下の効果を測定します。

試験に合格した防錆紙・防錆フィルムは、運搬や保管時にも安心して使えることが保障されています。

防錆シートのメリット

防錆シートのメリットは以下の4つです。

・安く手に入りやすい
・スピーディな防錆処理ができる
・梱包後の金属製品をそのまま使える
・使用後の廃棄に手間がかからない

安く手に入りやすい

ほかの防錆グッズと比べると、安価で手に入りやすいのがメリットです。メーカーにもよりますが、防錆油は18〜20L缶で約1〜3万円かかります。

スピーディな防錆処理ができる

防錆シートは、金属製品を包むだけで容易に防錆が可能です。とくにサイズが小さく複雑な製品は、油を塗ったりスプレーをしたりして細かいところまで作業するのが困難なので、塗りムラが発生する可能性もあります。その点、防錆シートは包むだけで防錆処理が完了するため、作業時間を短縮できます。

また防錆油やスプレーを使うと、どうしても作業者や現場が汚れてしまうため、清掃が必要です。一方、防錆シートは梱包する際に汚れる心配がないため、よりスピーディな防錆処理が可能です。その必要もありません。

梱包後の金属製品をそのまま使える

防錆シートは防錆油やスプレーとは異なり、包装後の金属製品を洗浄する必要がありません。そのため、洗浄の工程にかかる時間・手間といったコストを削減できます。梱包前のきれいな状態を維持し、必要なときにすぐ使えるのがメリットです。

使用後の廃棄に手間がかからない

防錆紙や防錆フィルムの使用後は、一般廃棄物として簡単に廃棄できるのもメリットです。一斗缶やスプレーの場合は、防錆剤が残らないよう洗浄して綺麗にする必要があります。

一方、防錆シートは油や金属粉などが付着していなければごみ袋に入れ、燃えるごみやプラスチックごみとして処分できます。ただし汚れがひどかったり大量に廃棄したりする場合は、産業廃棄物として処理が必要なので、各自治体に相談・確認しましょう。

防錆シートのデメリット

防錆紙と防錆フィルムはメリットが多い一方で、それぞれ異なるデメリットも生じます。以下の内容を踏まえて、用途に合った防錆シートを選ぶのが大切です。

なお共通するデメリットは、金属の種類によって防錆シートの使い分けが必要な点です。気化性防錆剤は、金属表面での化学反応によって皮膜を形成します。鉄や銅、亜鉛など金属の種類によって化学反応を起こす成分が異なるため、それぞれに合った防錆シートを使用しなければなりません。防錆シートと対象金属の組み合わせには注意しましょう。

梱包紙を使用する場合のデメリット

防錆紙の場合、以下3つのデメリットが考えられます。

・大きな金属製品を梱包できない
・屋外で保管できない
・防錆効果が短い

防錆紙は長さに限りがあるため、大きな金属製品を梱包するのは困難です。また防錆紙は風雨に弱く、屋外での使用には不向きです。さらに防錆フィルムは最長5年ほど保管できるものもありますが、防錆紙の効果持続期間は最長約1年ほどと短めです。防錆紙は、小さな金属製品を梱包後に密閉でき、かつ屋内にて短期間保管する場合に適しています。

防錆フィルムを使用する場合のデメリット

防錆フィルムのデメリットは以下の3つです。

・防錆効果の出るまでに時間がかかる
・内部結露に弱い
・価格が高め

防錆フィルムは防錆紙よりも気化性防錆材の含有量が少ないため、効果を発揮するまでに数時間かかります。また急激な温度変化によって内部結露が発生すると、防錆紙とは異なり水分を吸収できないため、腐食し錆の発生につながるおそれがあります。さらに、防錆紙に比べると価格が高めなのもデメリットです。

防錆フィルムは風雨や紫外線に強く、防錆効果も長く続くため屋外での保管に向いています。またヒートシール性があるため、熱を加えるだけでさまざまな形状にフィットし、密封可能です。ただし防錆剤が金属表面に行き渡るまでは、保管場所の温度・湿度変化に注意しながら使用しましょう。

防錆シートのQ&A

防錆シートを初めて使う方は、さまざまな疑問が頭に浮かぶかもしれません。最後に防錆シートの効果が続く期間や購入できる場所を解説します。

防錆シートの効果はいつまで続く?

防錆シート効果の持続期間は商品やメーカーごとに異なりますが、開封後からおおよそ半年〜1年、未開封の場合は約3年です。なお梱包後は、金属表面の皮膜が時間経過とともに薄くなります。

1年以上保管したい場合は、梱包後の金属製品をポリ袋へ入れて密封すれば、3年程度まで延長できます。もし3年以上保管するなら、新しい防錆紙を使って梱包し直しましょう。

まとめ

防錆シートを購入する際は、使用期限や成分を確認し、用途に合ったものを購入しましょう。

ただし防錆シートは使用用途や環境、金属製品の種類や形状などを踏まえ、最適なものを選べるのか不安に感じる方もいるでしょう。そんなときは、一度もりや産業株式会社にてご相談ください。

当社は1960年の創業当時から培った包装・物流のノウハウをもとに、クライアントの状況や課題に合った最適な解決策をご提案します。1,000社以上と数多くのメーカーと取引しており、さまざまな業種の課題に合わせて柔軟に対応可能です。

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