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2024.11.29
業界コラム
いまさらですが、日本の食材・食品は海外で高評価されています。訪日外国人の方が日本食を食べて「Wonderful!Amazing!!」なんてYouTube動画も見たことありますよね。日本食、日本の食材、日本の飲料は世界のみなさんに大好評。しかも毎年、とーっても多くの外国人観光客たちが日本を訪れては帰国し、「すばらしかったよ!!」と宣伝してくれるのです。
見方を変えればそれだけの地力、ポテンシャルがその製品にあったということです。惜しいのは、それを「フツー」と思い込み、年々少子化で減少する国内需用者に向けて、苦労しながら販売することが当然となっている“思い込み”かもしれません。
さてさて、見方を変えれば世界も変わる。今回の記事では、農林水産物・食品生産に関わるみなさまに向けて、国内販売から海外への輸出に視点を変えればどうなるか、ということをお伝えしようと思います。そしてこの方策について、実はガンバっている国のバックアップ活動についてもご紹介致します。
2013年12月、和食はユネスコの無形文化遺産に登録されました。和食が「価値のあるもの」と世界の目で認定され、海外の人々に「異文化の、不思議でおいしい食べ物」として認知度が高まっています。
日本の農水産物・食品が世界各国市場へ浸透しつつある背景にはこのような世界の意識があります。また、「日本食は低カロリー、低脂質、食物繊維が豊富でヘルシー」と健康面からも高評価です。もともとそういうものですが、欧米人から見れば、「健康的な食材」です。
さらに、日本の生産者がつくるものには「安全・安心」なイメージが持たれます。長年にわたり、真摯に品質に取り組んできた姿勢が、今、世界の人に認められています。
その実証として、日本の農林水産物・食品がどれだけ海外で売れているのかを見てみましょう。ここに掲載したのは、農林水産省が公表している「農林水産物・食品の輸出額推移」です。
統計データは、今のところ2021年までしかありません。が、その値は毎年過去最高を更新しています。2020年から記載されている「少額貨物」とは1品目が20万円以下の(一度に大量輸出しない)農林水産物・食品を示します。この部分、前年比25.6%とグン、と伸びています。
大商いでなくったっていいんです。小商いで、海外市場に気づいて儲けている人がドンドン出てきている、ということです。小商いだけじゃありません。2021年にはついに輸出額1兆円を突破しました。農産物、林産物(きのこだって林産物です)、水産物、少額貨物全ての項目が伸びています。
政府は2025年には輸出目標2兆円を掲げました。2021年に1.2兆で2025年に2兆!?166%増?おいおい、大丈夫かと言われそうですが、政府は本気です。それどころか、2030年には何と、5兆円の輸出を目指しています。つまり、日本政府は「日本の農林水産物・食品は海外で売れる!」と考えているのです。
ではなぜ、政府は農林水産物・食品の輸出に力を入れるのでしょう。それはズバリ、少子化が進む国内では需要の先細りが予測されているからです。
日本中の第一次産業に従事する人々が困窮してしまっては国内が混乱し、自国の安定もおぼつかず、国力も低下します。日本全国の農林水産事業者の持続的・安定的な継続経営のためには、積極的な農林水産物の輸出が不可避、逆にやらなきゃアウト!ぐらいの感覚で考えています。
また、世界に目を向けると人口は増加傾向で、それに伴い食料の需要も増加すると見込まれています。農林水産省の予測によると、2050年の食料需要は2010年比1.7倍(58.17億トン)になるとされています。低所得国では2.7倍、中所得国でも1.6倍に増加すると見込まれています。
そのため、政府は令和2年4月1日に「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」いわゆる、「輸出促進法」を施行。法律の中身は「輸出先国との協議」「輸出円滑化措置(証明書発行・施設認定等)」「事業者支援」です。
「輸出先国との協議」とは、輸出の障害となる輸出先国の規制が化学的根拠に基づかないものならば、即時撤廃を求めて交渉するというものです。近年では放射能汚染水問題の影響がでていましたが、そのうち、水産物輸入禁止のほうは解消したようで、この規制解除がどれだけインパクトを持つものかは、以下のグラフを見ていただければわかります。
「輸出円滑化措置(証明書発行・施設認定等)」は輸出手続きの法的根拠の明確化と円滑化がなされています。具体的には、輸出証明書の発行、生産区域の指定、加工施設の認定です。簡単に言えば、事務手続きはあるものの「真正の日本産ですよ」のお墨付きになります。さらに、改正法では民間機関による認定、輸出証明書の発行も可能になりました。
「事業者支援」は国による生産者へのバックアップです。この輸出拡大計画はなによりもまず、「よっし!ウチの産品、海外に向けて売ってやろう!!」という生産者がいなければ成り立ちません。
でも、いざやろうとすると「どこに売れる?」「いくらで売れる?」「何か規制あるの?」「どーやって運ぶの?」など、今まで大地や海を相手にしてきた人にとってはわからないことだらけです。
その上、高齢者であれば尻込みしてしまうのも当然です。でも大丈夫!さっきの民間支援機関がいます。青果物も、お菓子も、醤油も、味噌も、お茶も、ホタテも、水産物も、みんな輸出促進協議会やそれに準ずる機関があります。
JAグループは「輸出関係連絡協議会」を農林水産大臣の主導で設置しています。だから、いろいろな疑問はまず、所属している団体に相談しましょう。そして、その団体関係者や先の民間証明・認定機関の人と話を進めると、「『輸出事業計画書』つくりましょう」ということになります。実はコレ、提出して認められれば、すっごく有利になる書類なんです。
輸出事業計画書を日本政策金融公庫に提出して認められれば(審査に合格すれば)、資金援助や債務保証を受けることができます。税だって優遇措置が受けられます。そのメリットについて以下に記述します。
海外向けに出荷が決まった。でも、それなりの量を輸出するから、出荷場も整えたい、人手だっている。効率化機器も取り入れたい。儲かる未来は見えてきた。でも先立つものは、「お金」。そこで、日本政策金融公庫が融資してくれます。
償還期限は25年以内と長期に設定され、大規模投資にも対応可能です。さらに、中小企業者に対しては、さらに長い10年超25年以内の償還期限が適用されます。この資金、長期運転資金や海外支店をつくる費用にも使えます。政府は、「やってくれるんなら、お金出すよ」と言っています。
輸出事業計画が認められると、輸出事業者は設備投資後のキャッシュフローを改善するため、5年間の割増償却措置を受けることができます。要は、(償却額が大きくなる=経費額が増える=見かけ上の利益が少なくなる)=それにかかる法人税が少なくなる、というわけです。実際何か損するわけではなく、結局のところ税金が少なくなるだけ。政府は「やってくれるんなら、税金安くするよ」と言ってます。
輸出をする日本人は、海外の人から見れば「異邦人」。どこまで信用していいものやら。そこで、大きな力を発揮するのが日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット(信用状)です。
金融の世界での「信用状」とは、債務保証書の意味になります。もし、あなたが海外支店を建てるため、現地の銀行でお金を借りたくなったとき、信用状があれば問題なく融資してくれることでしょう。
現地通貨建てですから、為替変動もなければ、たぶん現地銀行のサポートだって受けられます。ノーリスクで金利だけもらえる良いお客さんですから。海外金融機関は、輸出を始めたばかりのあなたの背景に、日本国を見ることになります。つまり、政府は「もし何かあったら、債務保証するよ」と言ってます。
政府は本気で日本の産品を世界に広めようとしています。それが、日本のよい未来につながると信じて。今回、紹介した輸出促進法の制定とともに、輸出促進のための司令塔組織「農林水産物・食品輸出本部」も設置されました。
そのメンバーもスゴい。本部長は農林水産大臣、本部員は、総務大臣、外務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、国土交通大臣及び復興大臣です。縦割り行政なんてやめて、日本総力でやるから協力して下さいよ、ということですね。
日本の少子化が回復するかは不透明です。そのような背景の中、国内の市場も大切にしながら、海外の市場へも目を向けてみませんか。初めてですが、この記事は次回も続きます。次回は具体的に、どの国で何が売れているか、の紹介や、品目ごとの生産から輸出への取り組み、輸出に対する課題についても紹介します。