お役立ち情報 USEFUL INFORMATION

2025.06.18

導入事例

【ご採用事例】 博物館の持続可能性に向けてー文化財保存への取り組みー

明石市立文化博物館 様

 今回、ご紹介させていただくのは、兵庫県明石市にある「明石市立文化博物館」様の倉庫におけるスタッフ様の作業負担軽減と環境整備支援の導入事例になります。

 兵庫県明石市は、歴史と自然が調和するまちです。駅前には国の史跡「明石城」がたたずみ、城跡公園からは明石海峡大橋や淡路島を望む絶景が広がります。東経135度日本標準時子午線が通る場所としても知られ、天文科学館などの学びの施設も充実。古くから漁業が盛んで、明石鯛や明石焼といった名物も豊富です。神戸や大阪へのアクセスも良く、暮らしやすさと観光の魅力をあわせ持つまちとして多くの人に親しまれています。

 明石市立文化博物館様は、明石の歴史や文化を広く伝える地域密着型のミュージアムです。常設展では、古代から現代に至る明石の歩みを貴重な資料や模型で紹介し、市民や来館者に地域の魅力を再発見させてくれます。年数回開催される特別展や企画展では、アートや郷土の話題を取り上げ、幅広い世代に親しまれています。

 また、ワークショップや体験イベントも充実しており、子どもから大人まで楽しみながら学べる場となっています。明石城跡にも隣接し、文化と自然を感じられるロケーションです。

【お客様】
明石市立文化博物館 様
(株式会社小学館集英社プロダクション様)
https://www.akashibunpaku.com/index.html

日本の博物館を取り巻く現状と課題

 今日、日本の博物館では、収集、保存、調査研究、教育、普及といった本来必要とされる機能に加えて、地域振興、観光、社会包摂(ソーシャルインクルージョン)、福祉など、地域の課題解決に取り組み、新たな社会的役割を担うようになっています。また、ポストコロナの時代における博物館は、デジタル技術を活用した新たな鑑賞方法の充実や持続的な活動のための予算確保や、新たな収益モデルの模索など「新たな日常」における在り方も求められています。

 様々な社会的役割を求められる反面、現場では人手不足により、女性やご年配のスタッフへの負担が増大しています。特に小規模館では、正規/非正規スタッフ問わず、多くの業務(広報・展示準備・収蔵品の保管・軽作業など)を担っておられるので、現場はそのしわ寄せを受けています。

 学芸員以外も受付や掃除、警備などの複数業務を抱えており、年齢による体力低下や子育てとの両立などにより心身への負荷が増大しています。こうした状況は、制度的なサポートが追いついておらず構造的課題となっています。

 今回のお引き合いは、この様な博物館が持つ課題解決に取り組むため、現場スタッフの作業負担を軽減することと倉庫の環境整備を目的として、ご相談をいただきましました。

今回お話をお伺いした 明石市立文化博物館 館長 武井様(左)、学芸員 木村様(右)

今回の問題点

 明石市立文化博物館様では、長年にわたって収蔵・展示を行ってきた中で、次のような運用上の課題が顕在化していました。これらは現場スタッフの負担増や資料の劣化リスクにつながる重要な問題であり、至急の改善が求められていました。

移動が困難な多数の展示台

 展示台は大型かつ重量があるため、展示替えのたびに台車を用いて数台ずつ運搬する必要がありました。限られた人員での作業は体力的な負担がかなり大きく、作業時間も多くかかっていました。さらに、展示台が保管されている場所は密に積み重ねられていたため、隙間がなく、清掃などの害虫対策が十分に行き届かないという衛生上の問題も生じていました。

あふれて平積みされた収蔵品

 倉庫内には、物があふれている箇所が多くありました。本来であれば系統立てて分類・整理すべき資料も、空いたスペースに順次置かれているため、取り出しが困難な状況となっていました。結果として収蔵品の検索性が低下し、資料の保存・活用の妨げとなっていました。

困難な清掃作業

 収蔵品が床に平積みされている状態では、資料の間にホコリが溜まりやすく、定期的な清掃や保守が困難になります。また、資料の出し入れの際に、周辺の物品を一時的にすべて移動しなければならないため、作業効率も著しく低下していました。

平積みされた展示品用アクリルケース

 展示品を保護するためのアクリルケースが、緩衝材を巻かれたまま無造作に積み上げられていました。特に下段のケースは取り出しに手間がかかり、ケースそのものの破損リスクだけでなく、保護用緩衝材のコストやゴミも問題も発生していました。限られた保管スペースでのやむを得ない対応ですが、ケースの有効活用や整理の改善が急務となっていました。

改善のポイント

キャスター付き大型可動ラック

改善のポイント①:大型展示台の運搬・保管・清掃効率を一挙に改善


 従来は人力と台車によって一台ずつ運搬していた展示台を、大型可動ラックと平台車でまとめて管理・搬送する仕組みに変更しました。これにより展示室までの運搬回数を大幅に削減でき、作業負担の軽減と時間短縮を実現しました。また、展示台をラック単位で移動・保管できるようになったことで、密集保管による清掃や衛生面の課題も解消し、作業環境全体の改善につながりました。

改善のポイント②:保管スペースの「見える化」で検索性と活用性が向上


 資料の増加によって混在・散乱していた収蔵品を、大型の保管棚に系統立てて整理しました。収納場所が視覚的に分かりやすくなり、どこに何があるかが一目で把握できるようになったことで、必要な資料の検索や再配置がスムーズになりました。あわせて、資料の保存状態も向上し、活用のしやすさや業務効率全体に大きな変化が生まれました。

改善のポイント③:平積みから脱却し、作業・清掃・保管効率が飛躍的に向上


 展示備品の平積みによる出し入れや清掃の非効率さを解消するため、可動式保管棚を導入。棚ごとに移動できるため、必要な備品を奥から簡単に取り出すことができるようになりました。さらに、棚をそのまま展示室まで移動して必要物品だけを取り出す運用も可能となり、作業導線の改善、清掃のしやすさといった効果を得ることができました。

改善のポイント④:アクリルケースの整理収納で破損リスクとコストを削減


 保管場所が定まらず、緩衝材を巻いたまま積み上げられていたアクリルケースに対して、可変式の大型保管棚を導入し、ケースサイズに合わせて高さを調整。どこに何があるかを視認しやすくなり、ルールに基づいた整理整頓が全スタッフに浸透しました。加えて、プラダンシートを活用することで滑り込み収納も可能になり、破損リスクの低減とともに緩衝材使用量の削減・保管効率の向上にもつながっています。

終わりに

今回の改善で、お客様にはこんなうれしいお声をいただきました。

「展示にかかる作業負担が大幅に改善しました」

「運搬の際の展示崩れなどの危険性が無くなり助かりました」

「収蔵品の整理整頓が進んだことで、省スペース化もできました」

「収蔵品・用具の運搬が楽になったため清掃が行き届くようになりました」

よくよく、お話をお伺いすると清掃による除塵作業が重要とのことでした。

 博物館では、展示物や収蔵品を守るうえで「カビ対策」が重要課題となっています。特に埃に付着したカビ菌は見落とされやすく、繁殖源となりやすいため、日常的な清掃による除去が不可欠です。これまでは燻蒸剤による殺菌が可能でしたが、2025年3月末をもって主要な燻蒸剤の生産が中止され、今後は物理的・環境的な管理が中心となります。

 こうした背景から、博物館でもIPM(総合的有害生物管理)の観点に基づき、明石市立文化博物館様においても「清掃による発生源の除去」「湿度や温度管理」など、予防重視の取り組みを一層強化されていくとのことです。今後も引き続き、お役に立てるご提案ができるよう、サポートして参りたいと思います。

 今回の導入事例の紹介は以上となります。ここで紹介した以外にも、もりや産業にはご提案できる「現場改善」ソリューション事例が豊富にあります。お気軽にご連絡いただければ、皆様のお困りごとを解決するためのソリューションをご提案致します。悩むより、ご相談を!長年にわたり蓄積されたノウハウで問題解決に貢献させていただきます。