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2025.06.02

業界コラム

思ったより大変!工場・倉庫のハト・アライグマ害獣対策について

 気候変動により、いままで害獣が現れなかった工場・倉庫・貯蔵庫などが被害に遭うケースが出てきています。温暖化により、害獣の生息範囲は拡大し、繁殖力も強くなります。

 気温が上昇することで越冬が容易になり、降水量が増えて飲み水に困らなくなるなど、地球温暖化は基本的に害獣を増加させます。気候変動の激しさが増している現在、昨日まで現れなかった害獣が、今日突然に現れても不思議ではありません。

 また、害獣と言えば、クマやシカなどが思い浮かぶかもしれませんが、これらの動物は生息域がある程度限られています。今回はもっと身近な、ハト、カラス、アライグマ、ハクビシン、イタチ等などの小動物にスポットを当て、工場・倉庫ではどんな被害があるか、どのような対策ができるかについて解説していきます。

 ハトやカラスはどこにでもいますし、アライグマやハクビシンは都会から少し放れた郊外や地方都市でも見られるようになってきました。身近になる一方、巣を作られたり、エサがあることを学習されると、その対策はむずかしくなってきます。まずは最もポピュラーなハトの被害とその対策から紹介しましょう。

思ったより大変、ハトの被害

 一見、無害そうで平和の象徴とされるハトですが、工場や倉庫では困った問題を引き起こします。まずはハトの被害をズバリ列挙してみましょう。

 こう書いてみると、わりと被害は深刻です。商品パッケージに糞が落ちて出荷できなくなってしまったり、うっかり糞の付着を見落として通販などでエンドユーザーの手に渡ってしまうと、大きなクレームになり会社の信用低下に直結してしまうケースも考えられます。

 ハトの糞は酸性のため、巣などを作られて、長い期間ずっと金属部分にかかり続けることで酸化や腐食を引き起こし、鉄骨崩落のきっかけになることすらあります。糞だけでなく羽毛の商品混入も考えられますし、鳥インフルエンザのような鳥類感染症が突然変異でヒトへ感染する危険性もあります。

 このように、工場や倉庫にとってハトはたいへんな厄介者です。それでは、このようなハトの被害を引き起こさないための対策はどういったものがあるでしょうか。

ハト対策は、住みつかれる前が大切!

 ハトは雨風を避けることができ、人の手の届かない高いところに巣を作ります。工場や倉庫は天井が高く、ハトにとってはとても居心地のいいところになります。工場内・倉庫内以外にも、シャッターボックスの上もハトが好んで巣を作る場所です。

 屋外とは言え、建物のひさしの下に位置して雨を防げることが多く、人の手が届きにくい、人に発見されにくい、上から見下ろすことで常に安全に注意を払うことができるなど、ハトにとって好都合な要素が複数あります。

 その他に、物流倉庫であれば、大型トラックが通行する車路で屋根のあるところ、工場や倉庫駆体で使われるH鋼のフランジ(張り出し)部分、排気ダクト(ベンチレータ)、明かり取りのための屋根開口部などの凹みも、ハトにとっては好ましい環境です。

ハトが巣を作る前の行動とその対策

 ハトは臆病です。いきなり巣を作りたいところに飛来してくるわけではありません。まずは気に入った場所の近くで、一番高いところに降りて「安全、心地よさ、巣が作れるか」についてじっと観察します。

 この観察場所で最も多いパターンは屋上の外周部です。つまり、ここにバードピン(ハト対策剣山)を置けば対策効果は大きいです。屋上全体に剣山を建てることはむずかしいですが、外周部ほど周囲が見渡せない屋上中央はハトにとって居心地の良くない場所になりますので、まずは外周部に設置しましょう。

 外周部には長い距離に有利なバードワイヤーも効果的で、外観もすっきりします。予算がかけられる、またはこの対策が重要な場合は、微弱な電気ショックでハトに学習させることも可能です。ソーラー発電と蓄電池の組み合わせで、新たな電力供給できる機器もあります。

 外周部対策と同時にバードネットによる侵入防止対策も行います。天井構造物に営巣されないように、天井梁の下にネットを張りますが、排気ダクトなど屋根側からの防止も忘れずに行います。排気ダクトでファンが回っているかどうかについて、ハトは理解可能です。ファンが停止している時を狙って侵入してきますので、このような場所も忘れずにバードネットを張ります。

 バードネットは25~50mmぐらいのマス目が良いでしょう。あまり小さなマス目ですと重くなったり、強風時に負荷となったりします。マス目が大きすぎるとくぐり抜けてしまいます。さらに、シャッターボックスの上など、面積の限られた箇所にはバードジェル(防鳥忌避剤)も有効です。

 このようにハトに中の様子をうかがわせないこと、侵入させないことが対策のキモとなりますが、これはカラスも同じです。カラスはハトに比べて体も大きく、力も強く、ダンボール箱をつついてその中身を取り出すこともできます。

 鳥に「ここはダメだ」と思わせる対策はたいへんですが、長期的な対策は、リスクを考えるとやはり必要です。もしも、新設で工場や倉庫を建てる場合は、あらかじめ鳥害対策を施しておくと長期にわたって大きな効果が期待できます。ぜひ、もりや産業までお気軽にご相談ください。

もし巣を作られてしまったら・・・勝手に駆除はできません。

 もしもハトに巣を作られてしまったら、そのハトの駆除を勝手に行うことはできません。巣の中に卵があれば、巣の撤去もできなくなります。これは「鳥獣保護法」があるためです。

 鳥獣保護法は、正式名「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」の題名にあるように、基本的に「保護」が目的で、許可を持たない人が殺傷することを禁止しています。

 その後は許可を得て自分で撤去するか、業者に依頼するかになりますが、一旦、建物内に侵入されているのであれば、専門業者に依頼する方が長期的対策などのアドバイスも受けられるためよいでしょう。やはり、鳥害対策は巣を作られないようにすることが肝要です。

害獣の対策は困難。基本的にはプロに依頼します。

 ここでは大都市近郊や地方都市での倉庫、物流倉庫でのアライグマ、ハクビシン、ネズミなどの小動物被害とその対策について紹介します。アライグマは北米が原産です。ペットとしてのアライグマが逃げ出したり、放されたりして野生化し、今では日本全国で繁殖する外来種となり、2005年からは環境相により特定外来生物に指定されて飼育や輸入は原則禁止されています。

 特定外来生物は、生態系、人の生命や身体、農林水産業に被害を及ぼすものが指定されます。中型犬ほどの大きさで、ずんぐりむっくりの体型、ふさふさしたシマシマシッポは可愛いのですが、実はけっこう攻撃的な性質です。

 基本的に夜行性で雑食、指が人間のようにはっきりと分かれていて、器用です。この手を使って、ぶどうに被せた袋を破いたり、果物の皮に穴をあけて中身を救い出すように食べ、他にはトウモロコシなどの穀類やスイカ、いちごなどの果物、ニジマスなどの川魚にも被害を及ぼします。日本はアライグマの天敵となる大型獣がいないため、個体数の増加も進んでいます。

 アライグマの他に倉庫被害をもたらす小動物ではハクビシンがあります。ハクビシンはジャコウネコ科の外来種で体長は60cmほど。東南アジア、中国より毛皮の採取目的で江戸時代に持ち込まれました。こちらも日本に広く分布し、夜行性、雑食、攻撃的な性質もアライグマと似ています。

 大都市需要向けの食料品倉庫や物流倉庫は、高速道路の充実、大規模面積が確保できる、土地代が比較的安価なことから、大都市近郊や地方都市の高速インター近くの山あいに多く存在します。

 そのほか、農産物収穫後の一次貯蔵庫も山間部に多くあり、アライグマの生息域拡大に伴なって場所がリンクすることで、被害が散見するようになりました。アライグマ、ハクビシンの他にはネズミなども倉庫に被害をもたらす小動物で、鳩の糞と同様、誤って消費者にダメージを受けた商品が渡ってしまった場合、大きなイメージダウンとなります。

増えているアライグマ被害

 農林水産省鳥獣対策室の報告では、アライグマによる農産物の被害額は00年に3,600万円程度でしたが、11年には3億8,300万円と10倍以上に増加しました。以降は横ばいで18年は3億7,500万円となっています。農水省担当者は「アライグマは繁殖力が高く、捕獲が追いつかない」と話しています。

 アライグマの駆除は主、外来生物法に基づく防除と、生活環境や農林水産業、生態系の被害防止のための鳥獣保護法に基づく捕獲があります。各自治体では自ら捕獲したり業者に委託したりしています。

 外来生物法に基づくアライグマの捕獲頭数は、環境省のまとめで06年度の3,800頭から16年度には3万5千頭と9倍以上に増え、鳥獣保護法に基づく有害駆除数は、06年度の6,200頭が16年度には1万5千頭と増加傾向にあります。

まずは小動物を寄せ付けない工夫を

 アライグマやハクビシンを寄せ付けないためには次のことを徹底しましょう。

 エサは与えていなくても、農作物採取後の残渣がある、生ゴミが残っている場合はエサを与えていることと同様になってしまいます。倉庫内に被害があった場合は、どこかに侵入されたすき間があるはずですから、徹底的にふさぎます。

 アライグマやハクビシンは、昼の間は倉庫内の天井裏や他の動物が床下や近くに掘った穴をねぐらにしますから、そこに至る経路もふさぎます。まずはすき間から侵入しようとし、それができなければ得意の木登りの要領で建物を上り、すき間を見つけようとします。

 このように、侵入経路を見つけ、塞いで隠れるところの無いようにすれば、人を恐れて近づかなくなります。とはいえ、小動物の通路、進入路は見つけにくいものです。

それでもアライグマが侵入してきた時は?プロに任せましょう。

特定外来生物であるアライグマは駆除対象ですが、勝手に捕獲できません。鳥獣保護管理法に基づく捕獲許可が必要となります。対応方法は自治体によって異なりますから、まずは役所に相談することになります。その後、自社でできる対策の流れは以下になります。

基本対応

1.【発見・初期対応】

近づかない・刺激しない:アライグマは攻撃的になる可能性があります。
社員・作業員へ周知:発見場所や時間を共有し、注意喚起。
出入口を封鎖:安全が確保されている範囲で、侵入口の閉鎖を検討。

2.【安全確認と現状把握】

被害状況の確認:糞尿、破損、足跡、咬まれた跡などをチェック。
監視カメラの映像確認:侵入経路や活動時間帯を把握。

3.【専門業者への連絡】

害獣駆除業者へ依頼:罠の設置や捕獲は、自治体の許可が必要なためプロに依頼。
市区町村の窓口へ相談:野生動物対応の地域担当窓口に相談するとスムーズ。

予防・再発防止策

1.【物理的対策】

開口部の封鎖:換気口・排水口・天井裏など、10cm以上の隙間は金網やパンチングメタルで封鎖。
ドアやシャッターの点検:夜間・休日は完全に閉め、施錠を徹底。
餌となるものの撤去:残飯、ペットフード、果物の皮などを放置しない。

2.【忌避剤・センサー】

アライグマ用忌避剤の使用:市販のスプレーやジェルタイプを付近に設置。
赤外線センサー・超音波機器:動物感知型の警報器や超音波撃退装置を導入。

3.【社内ルールの整備】

ゴミ出し・清掃ルールの見直し:食品残渣などは容器へ、清掃頻度を増やす。
従業員教育:侵入のサイン(足跡、鳴き声、異臭など)を認識できるよう啓発。

 具体的な捕獲は、「箱わな」(ケージトラップ)を使用して行います。トラップを設置する場所が重要になりますが、プロの経験により現場に合わせて設置していきます。ネズミなど小さな個体には粘着箱や毒エサを使用した防除を行います。これも箱わなと同様、置き場所が最大のポイントとなります。

 捕獲された動物は、なるべく苦痛を与えないように配慮しながら、捕獲者による殺処分となります。また、人に噛みつく、菌を有している場合もあります。この点からもプロに任せるのが賢明です。もりや産業でもハト・アライグマ等の害獣対策の実績はございますので、お困りの際は是非、ご相談ください。

まとめ

 工場・倉庫の害獣被害対策は、被害が起こってからではなく、できるだけ被害が起きる前に予防することがポイントになります。この対策には専門的な知見が必要になりますが、もりや産業ではこのような専門家によるアドバイスや、害獣対応が可能です。
 問題が起こる前に予防保全を行うことで、人と動物の共生も可能になります。工場・倉庫の害獣対策は、ぜひもりや産業にお声がけください。