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2025.05.07
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身の回りの金属製品が錆びてしまうと、見た目が悪くなるだけではなく、もろく壊れやすくなるといった実害があります。とくに鉄製品が赤く錆びた場合には放っておくと、錆びが広がり表面からボロボロに崩れてしまいます。こうした錆びを防ぐ方法は昔から考え続けられてきました。
現代では防錆処理の道具が数多くあり、一般の人でもホームセンターで簡単に入手できます。この記事では防錆処理の種類や方法について解説します。
そもそも「錆び」とは、金を除いて、あらゆる金属に発生する自然現象です。天然の環境では鉄をはじめ、ほとんどの金属は酸化物または硫化物といった化学結合状態で存在しています。
たとえば鉄製品は鉄鉱石を精錬し、酸素を分離させて作られていますが、これは科学的に安定した状態ではありません。そのため、鉄製品を放置しておくと自然の状態に戻るため、空気中の水分や酸素と結びついてしまい、酸化鉄に変わってしまいます。この酸化鉄が、一般的に「赤錆び」と呼ばれる状態です。
「防錆」は金属の錆びを防ぐ技術を指し、空気や水分を遮断するために金属の表面をさまざまな素材の被膜で覆います。被膜の材料により以下のような種類があります。
無機被覆
メッキによる金属被覆、クロメートやアルマイトなど化成処理
有機被覆
防錆油の塗布、防錆材での梱包、ゴムやプラスチック素材で覆う
メッキの金属被膜やクロメートの化学的な処理には、専門的な設備と技術が必要です。一般的な家庭で可能な防錆処理は、防錆スプレーや防錆フィルムを使った金属部品の保護になるでしょう。
「防錆剤」とは金属に錆びが発生しないように覆う薬剤、または包装材です。油性の防錆剤は「防錆油」とも呼ばれ金属製品に塗り、錆止め油膜を作ります。気化性・水溶性の防錆剤は「錆止め剤」と呼ばれ、粉末状または水に溶かして金属製品に塗るほか、包装材に塗布する使い方があります。
防錆剤を染みこませた包装紙が錆止め紙、フィルムに練り込んだり塗布したりしたものが錆止めフィルムです。
一般的な家庭で使用する金属製品に防錆処理をする場合には、防錆剤を塗るか、防錆材料で包む方法になります。一般的にホームセンターで購入が容易な防錆処理の道具には、防錆スプレーのほか、フィルムや紙、防錆塗料があります。
防錆処理の中で最も手軽に行える方法はスプレーでしょう。ホームセンターや工具の通販サイトでは防錆潤滑や長期防錆といったカテゴリーで、たくさんのスプレー商品が販売されており、安価な入手が可能です。
スプレーは防錆剤を均一な厚さで吹き付けができ、ノズルを使用すれば小さな範囲や、手の届きにくく奥まった箇所でも防錆処理できる手軽さが特徴です。専門家の行うメンテナンス業務から、家庭で行う金属器具の手入れまで用途が幅広く、細かな防錆処理に向いています。屋外に設置された金属器具や、自動車の定期的な防錆処理には欠かせません。
防錆スプレーの用途は大きく分けて、錆び発生の防止と錆び進行を止める2つの目的があります。金属表面を水や酸素から保護する膜を作る効果と、防錆剤を表面の隙間から内部に浸透させて、外部から見えない箇所が錆びるのを防ぎます。また、金属に付着した水分を除去して防錆油成分で膜を作る「水置換性」も効果の大きい性質です。
防錆フィルムとは気化性防錆剤を含んでおり、金属製品の包装内部に入れ、金属の表面に直接は触れずに揮発した防錆成分で保護します。スプレーのような身近な金属製品のメンテナンスに使うのではなく、主に金属製品の輸送や保管時の防錆処理に使用します。
気化した防錆剤は空気より重いため、梱包内の上部に被せて金属製品の周囲を防錆剤で満たす使い方もあります。
金属製品に直接塗布しないため、べたつきや変色など表面の質感を損なうリスクはありません。金属表面から水や空気を物理的に遮断するのではなく、化学反応で防錆効果を発揮するため、対象の金属種類に応じて防錆剤の使い分けが必要です。フィルムが透明なため梱包状態でも製品の状態確認が容易です。
防錆フィルムは対象の金属により防錆剤成分が違い、それぞれ「鉄・鉄鋼」「銅・銅合金」「亜鉛」の3種類があり、適切なフィルムを選ばないと効果が発揮できません。また梱包される金属製品に対して適切なサイズと距離を満たしている必要があります。
気化性防錆剤を使用しているため、湿度が高く気化しにくい場所や長期の保存では効果が薄くなるのも注意点です。
防錆紙とは、主にクラフト紙に気化性の防錆剤を塗布し乾燥させた包装材です。金属を防錆紙で包んだ状態で密封容器に収納し、内部で気化した防錆剤が金属の錆びを防ぎます。紙に油を染みこませた油紙も防錆効果を持ちますが、こちらは金属に貼り付け油成分で表面を保護します。
防錆紙は塗布された防錆剤が気化して金属表面に被膜を作りますが、仕組みの近い防止フィルムと比較すると多量の防錆剤を含有できます。フィルムが製造過程で加熱成形が必要なのに対し、水溶性防錆剤を塗って乾燥させるだけなので、耐熱性の低い防錆剤の使用も可能です。輸送や保管に向いた防錆処理方法です。
紙の防錆効果は鉄や銅など対象の金属種類によりJIS規格で品質が定められています。それぞれの金属に適した防錆剤を使用していないと、効果が発揮できません。また防錆紙は厚みにより折り曲げや引き裂く負荷への耐久性が違います。包装と開封が容易なので、大規模な資材の保管や輸送に向く点もメリットです。
スプレーよりも本格的な防錆処理には、ハケやローラーで塗る防錆塗料があります。たとえば、ホームセンターで販売されている「錆止め」「錆び落とし」といった名称が付いた、大型の容器に入ったペンキです。主に建築物のシャッターやフェンスなどの金属部分を、雨風による劣化から守るために使用されています。
防錆塗料の効果には錆びの発生防止と、錆びの進行抑制がありますが、十分な効果を得るには、事前の「ケレン」作業が重要です。ケレンとは塗装面に出ている錆びや古い塗料膜を削り落とし、金属表面をならす下準備作業です。こうして錆びの進行を止め、新しく防錆効果のある塗料で金属表面を保護します。塗料に含まれた防錆剤で錆びを防ぐ点はスプレーと同様ですが、より厚く頑丈な保護膜を成形可能です。
防錆塗料には大きく分けて3種類があります。以下の特徴から適した箇所に使用しましょう。
油性系
塗料面が厚く高い防錆性能を持つが、乾燥時間は長い
合成樹脂系
乾燥時間が早く屋外の紫外線にも強いためバランスが良い
エポキシ樹脂系
乾燥時間が早く頑丈な塗膜を作るが、紫外線に弱い
金属塗装にはエッチングプライマーという下地塗料があり、中には「錆び転換剤」を含むものがあります。錆び転換剤は既に発生した赤錆びを黒錆びに転換し、錆びの進行を抑えるため、ケレン作業の手間を軽減できますが、熱に弱い欠点があります。
基本的に車は新車の時点では組立工程で各部品に防錆処理が施されています。しかし屋外で長期間走っているうちに、外観を損ねる錆びが発生するのは避けられません。
普段は目にしない車の下回り部分は、路面の影響を大きく受けるため、錆びが発生しやすく進行も早い箇所です。とくに海に近い区域では海水の塩分が電解質となり、錆びの進行を早めてしまいます。同様に雪の多い地域で冬に撒かれる融雪剤も、鉄を錆びさせる働きを持ちます。
そのため、車体下部へ水分や塩分が触れないように遮断する防錆コーティングが有効です。海に近い地域では車を購入してすぐの時期に、雪の多い地域では降雪前のタイミングが最適でしょう。
鉄骨は建築物を支える重要な材料なので、錆びによる強度低下は大きな問題です。そのため鉄骨には防錆と建材の寿命を伸ばすために表面塗装が必須になります。
防錆塗料でのメンテナンスは、塗膜の寿命になる約5年を目安に塗り直しを考えましょう。さらに強度維持のため、鉄骨を脆くする赤錆をしっかり取り除く、入念なケレン作業も重要です。
防錆についてよくある質問へお答えします。
「錆」の音読みは「せい・しょう」です。そのため、正しくは防錆と書いて「ぼうせい」と読みます。なお「ぼうしょう」と読んでも間違いではありません。
しかし錆びは常用漢字ではないので、一般的には「サビ」とカタカナ表記がされるケースがほとんどです。そのため日常会話では意味がわかりやすいように、あえて「ぼうさび」読みを使用することがあります。
錆の発生は自然現象なので完全に防ぐのは困難です。身の回りの金属製品が錆びてしまったなら、以下の方法で落とすと良いでしょう。
クエン酸水溶液で洗い流す
軽微な赤錆を落とすにはクエン酸水溶液が効果的です。赤錆にはアルカリ性の性質があるため、酸性の液体で中和すると汚れが落ちやすくなります。クエン酸水溶液は家庭用の酢でも代用可能です。2~3倍に希釈した酸性の水溶液に赤錆部分を1時間程浸し、布やブラシでこすり落とします。最後にはきれいな水で洗い流します。
また家庭用クレンザー洗剤には研磨剤が含まれているので、こちらも軽微な錆びを落とすのに効果的です。
紙ヤスリや布ヤスリで削り落とす
クエン酸水溶液で落ちない赤錆は、紙ヤスリや布ヤスリで削り落とします。紙ヤスリは目の粗さが番号で決まっており、錆びを削るには600番ほどの粗い紙ヤスリを使います。しかしヤスリで削ると表面上に小さなキズが残るのは避けられません。
そこで仕上げに1200番ほどの目の細かい紙ヤスリを使い、水や潤滑油に浸して磨くと表面がキレイに仕上がります。
他にも錆取り用の不織布研磨剤があり、金属の錆びを削りつつ表面を研磨処理が可能です。
ワイヤーブラシで削り落とす
紙ヤスリでも削り切れない状態の重い錆びを落とすにはワイヤーブラシを使用し、本格的なケレン作業に近くなります。溝の内側などに効果的な一方で、平面の錆びを落としにくく、金属表面のキズが大きくなりやすいのがデメリットです。錆びを落とした後は表面の研磨や錆止め剤の塗布で仕上げましょう。
日常のあちこちで利用されている鉄や銅は、自然環境では酸化した状態が化学的に安定しているので、常に水や酸素と結びつき錆びていきます。金属製品の多くは製造工程内で、さまざまな防錆処理が施されています。
しかし、屋外で風雨に晒される建築材や自動車などは、錆びの発生を完全に防ぐことはできません。特に海水や融雪剤は金属に対して強い腐食性を持ち、短期間で錆びの発生と進行を誘発してしまいます。
また、倉庫内に収納している金属製品も湿気の影響から錆びが発生するため、防錆紙やフィルムで梱包するといった対処が必要です。使用者が適切に防錆処理をしなければ、どんな金属製品でもいずれは錆びて品質が劣化してしまうと理解しておきましょう。